記事表示の高速化が進むワケ
アップルに追随し広告ブロックを標準とする他社Webブラウザも出てきている。広告配信が企業としての生命線であるGoogleでさえ、表示が遅い(重い)広告やポップアップ広告などを抑止する動きに着手している。
広告ブロックツール提供者や利用者を、広告業界が追放することができる見通しはいまのところ、ない。逆に、主要な広告ブロックツール提供者らは「容認可能な広告」ガイドラインを打ち出し、広告業界に対しユーザー体験面からの改善方向を提唱してさえいる(「AdBlock Plus closes in on a billion downloads」)。広告がユーザー体験の悪化を招いていることの意識、無意識の反応が広告ブロックの浸透に表われているのだとすれば、この状況は簡単には終息しそうにない。
このトレンドにきびすを接しているのが、Facebookによる「インスタント記事」(「Facebookがメディアにユーザデータと広告収入を保証する高速ニュースサービスInstant Articlesを開始」)、GoogleおよびTwitterによる「AMP(アンプ:Accelerated Mobile Pages)」(「グーグル、“ページ表示が遅い”を解消する「AMP」プロジェクト—7秒が1秒に短縮」)など、記事の高速表示のトレンドだ。
上述のように、昨今の広告がそれぞれ膨大なプログラムコードを有しており、これを複数埋めこんだWebページの表示が時間を要するようになっているという背景がある。Facebookにせよ、Google、Twitterにせよ、自らのタイムライン、検索結果などから、それぞれのメディアサイトをWebで表示しようとする瞬間に、ユーザーに待ち時間を与えてしまえば、ユーザー体験を損ね、さらにいえば、離脱したり表示をあきらめるなどの機会損失を生んでいるとの認識で共通する。
そこで、インスタント記事、AMPのいずれも、広告表示を抑制し、コンテンツデータもスリムダウンする一方で、データを自社プラットフォームにホスティングするなどで、総合的にコンテンツ表示を高速化している。
メディアの側も、プラットフォームにモバイルページ高速表示の基盤を委ねるだけでなく、ユーザー獲得自体もプラットフォームのパワーに積極的に委ねる戦略を考案しようとしている。「分散メディア」と呼ばれるコンセプトだ。これについては、機会を改めて論じよう。
さて、記事表示の高速化、ユーザー体験の向上は、プラットフォーム頼みのままにしていて良いのだろうか?
メディア自らはどのように取り組んでいるのか、最後に触れておこう。
「藤村厚夫のメディア地殻変動」バックナンバー
- 「広告の終わり」が始まった、邪魔ものからの変身は可能なのか?(2017/5/23)
- 大手広告主の予算凍結事件が突きつけるもの。メディアが生み出す文脈的価値とは何か?(2017/4/20)
- コンテンツの供給過剰が価値下落を生む?メディアの付加価値を高める5つのポイント(2017/3/24)
- 「エンゲージメント」はメディアの価値を支えられるか?2016年の大転換から見直す(2017/2/20)
- 2017年、メディアをめぐる白熱のポイントを展望する―藤村厚夫氏(スマートニュース)(2017/1/25)
- Webメディアへの信頼が揺らぐなか、課金型メディアが新たな局面を迎えている(2016/12/15)
- 米国大統領選を動かした?“フェイク(偽)ニュース”とメディアはどう戦うのか(2016/11/22)
- 近未来のメディアでは、「編集部」が姿を消すかもしれない(2016/10/20)
新着CM
-
広報
荏原製作所のメタバースインターンシップ、多様性推進が背景に
-
AD
クロス・マーケティンググループ
クロス・マーケティンググループ、マーケティングDXを推進する人材を募集
-
広報
関東学院大、地域に開かれた新キャンパス テレワークスポット開設へ
-
AD
クリエイティブ
「働く」をデザイン 従業員の行動が変わるオフィス
-
お知らせ
一次審査の結果にどう向き合う?審査員に聞く「宣伝会議賞」の活かし方
-
広報
日本ガラスびん協会、魅力伝える漫画本を教育機関に無償配布
-
マーケティング
「謎」のある広告に魅力を感じる―小島ゆかり氏(「私の広告観」出張所)
-
AD
特集
AdverTimes. Jobs
-
クリエイティブ
マックフライポテトが揚がる「ティロリ音」が楽曲に Ado・asmiの曲もリミック...