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コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

広告業界は「特別な場所」だという幻想を、そろそろ捨てる時だと思う

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2016年は広告業界の曲がり角だった

2017年の春になりました。この春は見回すと、いろんな方がけっこう“移動”しています。きっとあなたの周りにも多いのではないでしょうか。変化を身近に感じる春です。たくさんの皆さんの一人ひとりの変化が、大きな変化をもたらそうとしています。

そんな変化の春から、このところ起こったことを振り返ってみると、2016年は大きな、大きな“曲がり角”だった気がします。気がしますというか、間違いないですね。はっきりと、パラダイムシフトが起こったのです。もっと言うと、何かが終わった、何かが始まった。そして、ひとつ大きな区切りがついた。

それを強く感じたのは、ちょっと言いにくいのですけど、電通の社長が辞任を表明したときです。12月28日でした。びっくりしましたね。十分世間からつべこべ言われて、もう禊(みそぎ)は済んだのではないかと思っていたら、社長が辞任までしなきゃいけないのかと。

それがちょうど、12月26日の「SMAP×SMAP」最終回と重なったもので、2016年も押し詰まって最後の最後にダメ押しされた気持ちになりました。

「電通鬼十則」も、ずいぶん叩かれましたよね。諸悪の根源みたいな言われ方。80年代後半に上から7番目だか8番目だかの広告代理店に入った私にも、当時のバリバリの営業の偉い人が教えてくれたものです。「電通にはな、鬼十則というのがあってだな」と。ライバル会社の社訓なのに、まるで自分の会社のことのようにドヤ顔で言っていて、「ああ、鬼十則は電通というより業界全体の家訓なんだな」と思ったものです。

ずいぶん後になって、その鬼十則を作った吉田秀雄氏について学んだとき、すごい人だったんだなあと思いました。日本の広告業界の、いやメディア界も含めた業界全体の構造をつくったのは、この人なのだと受け止めました。

さきほど、パラダイムシフトと書きましたが、その好例は「天動説」と「地動説」だと大学で習いました。ガリレオが地動説を唱えたとき、まだそれでは説明できない宇宙の構造がいっぱいあったそうです。「では、地動説であの星の動きはどう説明するのじゃ」と問い詰められたガリレオは答えられなかった。それで苦し紛れに言ったのが「それでも地球は回っている」だったのだとか。

それからすると、吉田秀雄氏が構築した天動説的な業界構造が、地動説へ向かって基本的な骨組みから変わらざるを得なくなったのが、2016年だったのではないでしょうか。

高橋まつりさんの件、業界構造のパラダイムシフトに大きく影響を及ぼしたわけです。それに対して、「彼女は気の毒だったが、そういうことじゃないだろう」と言う人も多い。彼女の周りで不幸なことが起こったのだろうけど、だからって業界全体の法則までとやかく言われる必要があるのか。そんな気分だと思います。実は、私も当初、そう感じていました。

でも、電通の社長辞任が2016年の最後の月の最終週に、「SMAP×SMAP」の最終回とともに起こったのを見て、ああこれは本当に全体が一度ご破算になろうとしているのだ、と思い直しました。もう次へ進まざるを得ないのだと。

次ページ 「広告業界の働き方は本当に変わるのか?」へ続く