ブランドセーフティと短期の売上、どちらを選ぶ?
掲載面の管理においてメディアの手厚いサポートが必ずしも得られず、かつフリークエンシーの管理も同時に行わなければならない。これらを踏まえ、巨大広告主ではない企業はどのようにブランドセーフティと向き合っていけばいいのでしょうか。まず最初にしなくてはならないのは、ブランドセーフティに対して社内でコンセンサスを醸成することです。短期的な売上視点での効率性を重視するのか、ブランドセーフティを重視するのか、その間でバランスをとるのか。効率性重視でブランドセーフティを無視するというと聞こえは悪いですが、ブランドセーフティのリスクはブランドの資産価値が定量化できない以上は、どこまでいっても定量化できないのと、ブランド毀損のリスクはそもそも広告に限られた話ではないのでそこだけに神経を尖らせずホリスティックにリスク受容する、というのは合理的な経営判断かもしれません。
次に、そのコンセンサスを踏まえ、メディアバイイングのポリシーを策定します。掲載面の管理に関しては、まずは公序良俗に反するサイトを「アダルト」などのカテゴリーで指定して除外設定したり、過去に問題のあったサイトをブラックリスト指定するなどの対応は必ず実施すべきです。そうして最低限のブランドセーフティを担保してあとはリスクを許容するか、厳格に管理するのであれば、アドネットワークなど掲載面が確認できないメディアでの「行動ターゲティング」は使わず、ヤフーの「ブランドパネル」などの予約型のメディアや、ソーシャルメディア広告などに限定してプランニングを行うという選択もありえます。
フリークエンシーの管理に関しては、キャンペーン毎あるいは月毎のフリークエンシーの上限をどこで設定するか、フリークエンシーの管理をどの程度厳密に行うかが争点です。上限の設定は、フリークエンシーが何回になったときコンバージョンが最大化されるか、という検証はA/Bテストなどで可能ですが、何回からブランド毀損のリスクが発生するかは、調査をする以外に検証する方法はありません。調査の実施が難しければ、ユーザーとしての感覚値で設定する、などでも、設定しないよりははるかに良いでしょう。2番目のポイントに関して、複数メディアを使う以上、合計のフリークエンシーは推計する他ないのですが、メディアを増やせば増やすほど推計の精度は落ちます。そのことを前提に、どの程度の数のメディアを掛け合わせて使うのか、という問題に落とし込んで考えていきます。
また、3PAS(第三者広告配信)を導入すれば、メディアを横断したフリークエンシーや、アドベリフィケーションという機能を使うことにより掲載面の管理がしやすくなりますが、従量課金で配信コストがかかってくるので、ここでもコスト効率は犠牲になります。
マーケティング担当者は、事前に経営のコミットメントをとっておこう
この辺りはかなり専門的な話にはなるのですが、短期の売上をとるかブランドセーフティをとるか、というハイレベルな判断なので、頑張って説明して経営レベルのコミットメントをとっておくことが望ましいです。さもなくば、売上不調だったキャンペーンのレビューなどでトラフィックの落ち込みを指摘され、これはブランドセーフティ云々という話をしたところ、「むむ、何だそれは」、となったりしかねません。経営レベルもこの粒度でデジタルマーケティングを理解しなくてはいけない時代がきた、とも言えます。
4月22日発売の拙著「デジタルマーケティングの実務ガイド」では、このあたりのプロセスをより細かく解説しているので、興味を持たれた方は参照してみてください。
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