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コラム

「シェアしたがる心理」のこれからを考える

世界最先端の「顧客体験」ってどうなってるの?【前編】

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エクスペリエンスとシェアの時代

現在、マーケティング上の最重要課題は何か?
そう問われたらなんと答えるでしょうか。

ひとつ最も有力な回答が、「顧客体験」というものでしょう。プロモーションの話としてはもちろん、マーケティングが扱う4Pすべての領域にまたがる統合的・横断的なアジェンダの核を構成します。言い換えれば、企業の競争力をドライブする源泉になっているわけです。今回のカンファレンスも「Experience Makers」がテーマに掲げられ(去年は「Make Experience Your Business」)、そのための各種ソリューションが紹介されていました。

Experience Makers。つまり、企業は顧客にとってのエクスペリエンスを生み出せる人材にならなければならないということです。

このテーマの重要性は広告業界にいても強く痛感するところですし、僕のリサーチの関心もそれに近いのでどのセッションも有益なインプットになりました。ユーザーが自分たちでシェアして情報を広めていく時代だからこそ、「エクスペリエンス」がさらに大切になるのは間違いないのです。そのような「シェアしたがる心理」の次を占う上での大切な視点であるということを確認した上で、カンファレンスの内容を紹介してきます。

Day1(3月27日)では、シャンタヌ・ナラヤンCEOを筆頭にAdobe社内の方々のビジョナリーな議論が聴けたことが印象的でした。シャンタヌ・ナラヤンCEOの第一声は、いまのビジネスのキーワードは「People buy Experiences, not products(顧客は製品を買っているのではなく、体験に対してお金を払っているのだ)」。BtoCだけでなくBtoBも顧客に対してのエンゲージメントを深めるための体験をどうデザインするかという意味では同じ課題に直面していると指摘しています。

そのようなビジネス環境の中で、エンタープライズ用の新しいアーキテクチャが必要なはず…ということで、フォトショやイラレを活用するクリエイターのための「Creative Cloud」や、今回フォーカスされているマーケター向けの「Adobe Experience Cloud」があるというわけです。

Adobe Experience Cloudが目指すのは、生活者のジャーニーを把握すること、全ての接点(スクリーン)を一元的に管理すること。しかしそれは人力だけで成し遂げることはできないでしょう–だからこそ、そのためのAI支援が必要になるわけですが、ここにアドビの人工知能である「Adobe Sensei」というものが活きてくる。行動をしっかり把握するハイパーパーソナライズといえます。

続いてブラッド・レンチャーVPも、こうしたテーマを継ぎながら、「Make Experience Your Business」というキーワードを提起。スニーカーが好きだそうですが、ご自身の経験から、ナイキのようなブランドも自分を含め一人ひとりにパーソナライズされた体験を提供しているということを自分ごととして紹介しました。現に、ブランドにとってもエクスペリエンスがとても大切だというデータもあります。

エクスペリエンスに投資をしているExperience-driven businessesに移行することで、様々な指標が改善されるというForrester社のデータです。ブランド認知(brand awareness)や顧客満足度(customer satisfaction rates)は1.6倍に、広告効果(return on ad spend)は1.9倍に、そして顧客のLTV(customer lifetime value)も1.6倍になるとまとめられています(出所:「The business impact of investing in experience」)

「Fortune 500」に該当する企業の約3分の1が活用しているAdobe Analytics Cloudでは、NFLの導入チームの事例をもとに、ソーシャルメディア、ポッドキャスト、ECなど様々なチャネルでのパフォーマンスを計測していることが紹介されました。また、Adobe Marketing Cloudでは、メルセデス・ベンツの事例について紹介があり、さまざまなチャネルに発信する広告素材が一瞬でつくりかえられるさまがデモで実演され、「Contents Velocity」こそが重要だというキーワードが提起されました。つまりコンテンツもいかに早く提供するか、それがユーザーにとってのエクスペリエンスを左右するというわけです。

次ページ 「マーケターが一足飛びでCDになれちゃうかも?」へ続く