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平塚元明×野添剛士「戦略とクリエイティブは、より一体化していく」―手書きの戦略論 特別講座より

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基本的な戦略や過去事例を知っておくと、プランニングのスピードが上がる

平塚:日々それを繰り返している…という意味でいうと、戦略の基本の型のバリエーションを頭に入れておく意味は大きいですよね。

野添:互いに話が早いです。いちいち説明しなくても、わかっているから。あと、歴史(過去事例)を知っているって、実はすごく重要で。過去と同じものをつくらないって視点でも大事だし、それを踏まえて今を作るって意味でも。

平塚:この本も、各戦略論を歴史のアプローチから書きはじめていますよね。1950年代、60年代から始まって。そして、磯部さん自身も、この本の最終章で「戦略の統合が人を動かす」と言っています。型を組み合わせる、自分の型を発明するという話は、先ほどの野添さんの話とも通じていますね。

手書きの戦略論 「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略』(磯部光毅著)

 

コミュニケーション戦略と経営戦略が、より近くなっている

平塚:この本の発売は2016年でしたが、その後はっきりしてきた潮流などもあると思います。野添さんの目から見て、どうですか。

野添:そうですね…例えばここ数年、D2Cブランドが存在感を増していますよね?D2Cが勢いを持っているだけでなく、大企業もD2Cのやり方を取り入れたりしている。これは何かというと、[プロダクトを開発する]→[そのプロダクトを世の中に認知させ、好意をつくる]→[販売する]…という順列の流れが、ぐっと一つに凝縮されたんだと思うんです。

平塚:なるほど、確かに。

野添:言ってみれば、コミュニケーション戦略が経営戦略でもあるという状態になっている。クライアントと仕事をする中でも、そういう考え方や作り方の相談は増えているので、もしこの本の続きを磯部さんが書いたとしたら、そういう話になるんじゃないか、と思います。

平塚:そういう意味でいうと、「戦略」が関与する領域も変化しているし、「クリエイティブ」という言葉も、商品開発や事業開発のニュアンスも含むようになっていると感じます。広告表現という狭い範囲では収まらなくなってきていますね。

筋のいいロジックだけで感情は動かない、だからクリエイティブが要る

野添:クリエイティブについて僕が思うのは、いいクリエイティブって、やっぱりほとんどが筋のいいロジック、戦略の上に建っているんですよ。でも、面白いのは、逆もまた然りというわけではなくて…

平塚:うん、うん。

野添:筋のいいロジックの上に建てれば、必ずいいクリエイティブになるか、というとそうではない。「正しいけれど面白くない」みたいなパターンもあって、やっぱり人を動かそうとするなら、「正しい」の上に「面白い」や「新しい」、「感動する」のような、感情が動くポイントがすごく必要になってくる。

さっきのパスとシュートの話じゃないですが、戦略とクリエイティブが一体になって大きなクリエイティビティをつくっていかないと、と思うんです。

平塚:なるほど。そこに「大クリエイテビティ」みたいな概念があるんですね。

野添:そこが経営ともつながり始めている、というのが大きな流れだと思います。経営、商品、開発のしかた、ユーザビリティの設計、と全部つながってきているので。

平塚:クリエイターの活躍するフィールドも、それに伴ってだいぶ広がっていきますね。

野添:僕はあるクライアントにCCO(チーフクリエイティブオフィサー)という肩書きで入っています。クライアント内のデザインチームやプロダクトの開発チームと一緒になって、全体で動いていく。そういうケースは今後もっと増えると思います。

平塚:筋のいいロジックの上に…というさっきの話ともちょっと似てきますね。いい組織を作ったからと言って必ず面白くなるわけではない。そこに“何か”が要ると。

野添:そうです。そこに“掛け算”するクリエイティビティが必要で。それがいま起きているチャレンジの一つだと思います。

平塚:戦略プランナーの1人として、考えていかなければいけない宿題をもらった気がします。今後も頑張って行きましょう。

野添:はい(笑)。こちらこそよろしくお願いします。

「手書きの戦略論 特別講座」より

平塚元明(ひらつか・もとあき)

マーケティングプランナー
1989年博報堂入社。マーケティングプランナーとして、さまざまな業種の広告プランニングを担当。2003年博報堂退社。現在はフリーのプランナーとして、広告やウェブのプランニングを中心に活動中。主な著書に『図解でわかる インターネットマーケティング』(共著・日本能率協会マネジメントセンター)、『ポスト3.11のマーケティング』(共著・朝日新聞出版)などがある。

野添剛士(のぞえ・たけし)

SIX クリエイティブディレクター/CEO
企業やブランドのトップと向き合い、For the BrandとFor the Peopleの複眼でブランドに本質的な成長を生みだすことを信条とする。見かけによらず茶道をたしなみ、好きな言葉は「和敬清寂(わけいせいじゃく)」の元高校球児。国内外の広告賞で150以上の受賞、審査員も多く務める。

読み継がれて7刷出来。宣伝会議のロングセラー。
『手書きの戦略論「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略』
磯部光毅著/定価2,035円(本体1,850円+税)

コミュニケーション戦略を「人を動かす心理工学」と捉え、併存する様々な戦略・手法を「ポジショニング論」「ブランド論」「アカウントプランニング論」「ダイレクト論」「IMC論」「エンゲージメント論」「クチコミ論」の7つに整理。それぞれの歴史的変遷や、プランニングの方法を解説する。体系的にマーケティング・コミュニケーションについて学ぶための一冊。
宣伝会議ベストセラーライブラリーでは、本書をもとにしたオンデマンド講座も配信中。

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