【前回】「齋藤精一×豊田啓介×西牟田悠「可変する建築」【後編】」はこちら
未来は予測できるのか?
本日は、これから30年先の未来についてお話ししたいと思います。
未来はどのような方向に向かっていくのでしょうか。その多くは、まだ予測不可能であり、未知の領域といえます。ただし、一部については予測することができます。本日はその予測可能な方向性についてお話しします。
まず理解しなければいけないのが、テクノロジーというのは“単体の存在ではない”ということです。今私が使用しているマイクやコンピューターといった単体ではなく、“一つの大きなシステム”であるといえます。さまざまなものがお互いに接続され、大きなネットワークを形成しており、私はそれを「テクニウム」と呼んでいます。
テクノロジーはそれぞれが自立していても同じパターンを繰り返し示し、ある特定の方向にベクトルが傾いているのです。その傾きは、どこに由来しているといえば、そのシステムを構成する“テクノロジーそのものの性質”からです。
電気のスイッチやシリコンチップ、あるいは電気の配線といった物理的な存在が、全体としての傾き、つまり方向性を決定するのです。これが「テクニウム」であり、長期的な方向を定めています。そこで、このテクノロジーの傾きを見ることで、長期的なトレンドが予測可能になるのです。
例えば、「4本足」について考えてみましょう。4本足は重力の物理法則から考えて、とても安定した存在です。そのため、重力のあるどの惑星に行ったとしても、おそらく動物は4本足で歩き、車両も4本のタイヤを持っているはずです。これは実世界の物理法則によって決まっています。
つまり4本足という形態そのものは不可避ですが、その個々の種の存在は不可避ではありません。これは4本足の動物という存在は不可避だけれども、それがシマウマといった具体的な種になるかは不可避ではないということです。
もう一つ例を挙げましょう。雨が渓谷に降り注いでいるとします。そのとき、一つ一つの水玉がどういった経路を通って、谷底に到達するのかというのはランダムであり、予測不可能です。ただ、“下に向かって流れていく”という方向は不可避です。それは、重力という力がある特定の方向に水を動かしているわけです。
では、テクノロジーやデジタルの領域においてはどうでしょうか。
大きなくくりで考えれば、“電話”という形態は不可避です。どのような文化や時代、政治制度でも電力と配線が生まれれば、電話というテクノロジーは到来します。一方で、iPhoneは不可避ではありません。個別に生まれる製品や企業までは予測できないのです。
電話と同様に、“インターネット”も不可避な存在でしょう。いったん電話が生まれてしまえば、そこからインターネットへと進化するのは不可避だったわけです。ただし、そこからTwitterが生まれるかどうかは不可避ではないのです。
こうした大きな視点から、20年先や30年先の未来を見渡してみましょう。それは支流が入り組んだ大きな川のようなものです。それぞれの川は自立していて、同時に相互に依存し合っています。私は新著『〈インターネット〉の次に来るもの』の中に挙げた12の支流は全て現在進行形であり、物事が続いていく過程だと捉えています。
どのトレンドも、すでに今存在しており、将来的にはその傾向が増大していきます。今日は、その中で三つの重要なトレンドを説明しましょう。
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