このようにクーポン共同購入サービスは、「高い割引率」というインセンティブをもとに、地域や時間による「限定」感を演出しているために、参加者が「我々化」しやすく、連帯感を持つまでのハードルが低くなっていると考えている。従来ソーシャルメディア上ではよく言われており、当サイトのコラム「高広伯彦の“メディアと広告”概論」でも高広氏が紹介している「Tribe:トライブ」という概念があるが、最初に定義したセス・ゴーディンの著(Tribes)の中で「Tribeにはリーダーが必要」と書かれており、「我々化」とは異質な気がする。というのもクーポン共同サービスによって形成される「我々化」は地域や時間が限定的であり、その内容には明確なリーダーが存在しないからである。
では「地域限定」の「お得な情報を発見」し「共有体験をするために情報拡散」をしたうえでその購入体験自体を「我々化」するというのは何に似ているだろう?
筆者は「突発的な祭り」ではないかと考える。通常祭りは周到に告知も含めて準備されるのであるが、知らない人同士でも踊りを踊ったり、またはその時間にその場でしか味わえない体験を共有する。つまり祭りはクーポン共同購入サービス同様、地域や期間が限定されるケースが多い。近所で祭りが始まれば自然と口コミが発生し、人が集まってくる。「近所で祭りが始まったから行こうよ」という文脈は「安い限定クーポン見つけたから買おうよ」という文脈に非常に似てはいないだろうか。
さらにいえば、その時に神輿(みこし)を担げなかったり、金魚すくいが混んでいて参加できなくてもさして気にしないのではないだろうか。つまりそれはあまり知らない人でも特に抵抗なく、しかもその後のつながりをあまり深く考えなくても比較的ゆるい人間関係の中で共有できる事柄ではないだろうか。そしてそのちょうどいい媒介として、特にツイッターのようなリアルタイムソーシャルメディアが存在してサービスを後押ししてゆくのではないだろうか。
筆者は今後も、このクーポン共同購入型ビジネスのようなゆるい「我々化」を中心としたビジネスやその構造を利用したマーケティングが数多く出現すると考えている。その背景には、ゆるい「我々化」がWebで成立しているからである。もうひとつ、こうしたビジネスの出現と成長を支える大きな要素としては、全国民レベルで支えるインターネットを支えるインフラ、例えば「光の道」構想も上げられるであろう。こちらも別の意味で注目していきたい。
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