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コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

動画制作のクラウドソーシングから見えてきた!映像制作者は自分たち自身を価値付けせねば。

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Viibarで聞きたかったことは二つ、映像制作というややこしい作業がクラウドソーシングで成り立つのかと、実際にどう作業を進めるのか、です。

一般的なクラウドソーシング事業は、頼みたい人と、作りたい人をマッチングさせる仕事、ということだと思います。映像はそれで済まないんじゃないかなあ。そう思って聞いたら、まさにそうだったそうです。

この図を見てください。当初はこの「マッチングシステム」をやる会社として起ち上げたそうです。でもスタートしてみると「完成まで面倒見てもらえますか?」という相談が多かった。そこで「制作管理支援システム」もはじめて、いまはこちらが中心になっているそうです。

映像は要素が多い制作物です。絵が動くというだけでなく、音楽も発生します。著作権や肖像権などのケアも必要です。そして何より、グラフィック的な制作物より圧倒的にわからない部分が多い。発注側は映像に関する知識が非常に少なく、それだけ不安も多いわけです。マッチングだけであとは作り手と直接やってくださいね、と言われても困る人が多いでしょう。もう少し深く関与してくれないの?と言いたくなるというものです。

プロダクション業務がわかっている人だと、なんだ、じゃあこれまでの制作会社が外注スタッフ中心で仕事するのと変わらないじゃないか。そんな風に受け止めるでしょう。でもそうではないのです。ここからがViibarのユニークなところ。

彼らはあくまで「制作の管理と支援」を「システム」によって行うのであって、直接的に制作するのではありません。それを請け負うのはクラウドで編成された制作チームです。プロデューサーはViibarにはいません。プロジェクトを言わば“見守る”存在にすぎない。テレビ局などで実際に制作作業の経験を積んだスタッフが、制作の進行状況をウォッチしてくれます。何かあればサポートする。つまり納品まで責任を持つのはやっぱりViibarなんですね。だからこそ、依頼側も安心して発注できる。

“見守る”ことを可能にするのが、そしてクラウドを通して作業をしやすくするのが、さらには依頼主側と制作チームとのコミュニケーションを円滑にするのが、彼らが独自に開発した制作支援システム。Viibarの価値のコアがここにあります。

スタッフ同士で、あるいは依頼主も含めて情報共有や意見交換するためのチャットルームがベース。まあ、これは最近、汎用ツールがいろいろ出ていますね。ああいったものと同じことができる。

そしてスケジュール管理。これを同じ画面でできるのは便利そうです。チャットしつつExcelでスケジュールを更新して共有していると、最新のものがよくわからなくなったりしますから。

そして極め付けなのが、プレビュー画面。こんな感じでどうですか?というチェックもこの画面でしてもらう。さらには、赤入れもこの画面でできる!「この部分をもっと見やすくして欲しいです。」「この部分にこういう要素を加えられますか」そんな要望ができてしまうのです。

これは便利。でも大丈夫かなあと不安にもなります。制作者からすると「シロウトのくせにそこまで言うなよ!」と言いたくならないでしょうか。若くてやる気あふれる制作者ほど、依頼主側の修正要望に反発してしまうものです。それから、依頼主側も制作者とのコミュニケーションに慣れていないと悪意なく変なことを言ってしまうこともあるでしょう。

ですから、制作チームの編成では、経験値の高い制作者に全体をまとめるディレクターとして立ってもらい、コミュニケーションの窓口役を委ねるそうです。ある意味、Viibar側はこのディレクターをどう選ぶかがポイントになる。それも含めての「制作管理支援」ということなのでしょう。

このシステムがViibar最大の武器です。現在20名いる社員の半数はエンジニアで、システムの開発にあたっています。このシステムで受注側も発注側も仕事がしやすくなりクオリティの高い制作作業を支援しているわけです。この画面を見ていると、自分の仕事でも使わせて欲しいと思う制作者はきっと大勢いるでしょう。

上坂社長は「自分たちはプラットフォームです」と規定しています。彼ももともとはテレビの制作会社で働いていた制作者だったのですが、「自分たちは作らない」のが方針なのだそうです。「ゆくゆくはデータをスポンサーさんにきちんと提示できるようにしたいです。クリエイティブは効果が分からないとコモディティ化しかねませんが、それを示すことで逆に価値を高めていきたいと考えています」ネットという場で崩れかねないクリエイターの価値を新しい手法によって逆に上げていくのが、彼らの目標なのだといいます。Viibarのやり方なら、その可能性は十分あると思いました。

次ページ 「映像制作は発注側からするとブラックボックス」へ続く