メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×
コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

電通から「青年失業家」に転身した理由(ゲスト:田中泰延)【前編】

share

テレビ局の社員はイキッテる?

田中:そんなこともあり、僕が本当に辞めることになったのは去年11月末ぐらいに、会社で早期退職者募集がたまたま目に止まって、これは応募しないとダメだと思いまして。

権八:退職金をめちゃめちゃもらえるやつですよね。

田中:そんなにもらえないですよ。澤本さんみたいな局長職や局次長の立場の人はもらえるんですよ。田園調布に家が建つぐらい。

澤本:建たない、建たない(笑)。

田中:僕は47歳、平社員ですからね。ド平社員だから大してないんですよ。だって、24年間勤めた退職金と、今回特別にもらった早期特別退職金を足したお金を残っている住宅ローンに全部払っても、まだ1千万残りますから。

中村:具体的ですね(笑)。

田中:47歳無一文になって、住む家にもまだ1千万借金がある状態になるだけなので、決して有利とは言えないんです。

中村:少なくともライフプラン的には、あと1千万は「どげんかせんといかん」ですよね?

田中:そう。この間、ライフプランナーに来てもらいました。それも電通辞めた同期で、「泰延、おまえ良かれと思って辞めたかもしれんけど、年金支給が67歳からになるとしよう。住宅ローンの残りを考えて、おまえ…62歳の時点で1億円足りないわ」と言われたんです。

一同:(笑)

権八:それよっぽど良い家に住んでるんじゃないですか。

田中:いやいやいや。大阪はそんなに高くないですからね。まぁ青年実業家の洋基くんはいいとして、絶対に会社は辞めちゃダメですよ。

中村:後悔してるんですか?

田中:会社を辞めたいという人には家まで行って、奥さん呼んで、「辞めちゃダメ、辞めさせちゃダメです」と言ってます。

権八:あと、辞めた直後のコラムで読んだんですけど、テレビ局の人達はイキッてると。

田中:辞めて気がついたのはね、会社員ってイキッてるんですよ(笑)。

澤本:「イキる」ってどういうこと?

田中:カッコつけてる、スカしてることを関西弁で「イキッてる」と言うんですけど、「イキがってる」に近いですね。

電通でもみなさんみたいなクリエーティブ職の人はそうでもないんだけど、営業や媒体局など、集団で背広着て、バッジ付けて仕事するような人は飲み屋に集団で来るとイキッてますわ。

一同:(笑)

田中:テレビ局の人だったんですけど、飲み屋に男7、8人で来て、イキッてるんですよ。話と言えば、「何々部の何々さんは次の部長になる」「何々さんはこの間の仕事がまずかったから降格させられた」と、組織の話ばかりしてるんですよ。

権八:しがちですよね、僕らも。

田中:それが大声で。つまり、僕たちは何々テレビの社員だから、こういう話をみんなに聞こえるようにしているというのがわかるんですよ。

中村:あー。

田中:ときどきタレントが来たという話を混ぜるわけですよ。何々さんがさぁ、みたいな。途中で男ばかりで飲んでるから、女がいないことに気が付くんですね。それで先輩が「おい、ちょっと女の子呼べや」と言うと、後輩が電話出して、「何々テレビの安藤だけど、今どこそこで飲んでるんだけど」って一斉にはじまるんですよ。

中村:わかる(笑)。

田中:最低だなと思ってたら、40分ぐらいしたら、かわいい女の子が5人ぐらい来たんですよ。これはイキッてるなと。

権八:一部始終を泰延さんはどういう状態で見てたんですか?

田中:うん、一人飲み。

一同:(笑)

田中:全部余すことなく聞き耳立てて、何なら録音しようかと思ったんですよ。絶対に書いてやろうと。

権八:イキッてんのはちょっと違うなと。そういう考えもあるわけですよね。

田中:そうですね。澤本さんは会社の偉い人だから、たぶんお中元やお歳暮が玄関見えないぐらい来ると思うんですけど。

澤本:僕ね、お中元、お歳暮来ないんですよ。本当に。これリアルにお中元が来たら返さないといけないから。全然返してなかったら、来なくなった。

田中:あ、徐々に減っていく。

澤本:だから本当に片手ぐらいですよ。来るとすごい効果あります。

権八:ここで言っておいたら来ますよ(笑)。

田中:みなさん、澤本さん、煎餅が好きらしいです。

澤本:煎餅好きじゃない(笑)。本当に来ないから。よく積んであるとか言うじゃないですか。積んである人っているんですね、本当に。

田中:いますね。だから奥さんはお礼状書いたり大変ですよ。贈り返したり。僕みたいな平社員でも、電通に24年もいたら、一緒に仕事をしたお世話になった会社から5個や10個は来るんですよね。で、辞めますと言ったら、パタッと来なくなった。

澤本:あ、本当?

田中:そんなもんだなと思って。

中村:でも、それはその後、何か立ち上げたというときにお花の1個でも出してやろうじゃないかというのは、たぶんみんな思ってると思うんですよ。それがそのままいきなり青年失業家としてデビューしちゃったから、どこにお花を贈ればいいんだという状態なんじゃないかなと。

田中:名刺にも住所刷ってないですからね。どこにも事務所がないので。

中編に続く

構成・文:廣田喜昭