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国語が苦手でも、3冊出版できた

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モビリティ領域に特化したジャーナリスト・編集者・ライターとして活躍中の楠田悦子氏。現在は二ューズウィーク日本版のコラムニストや、地域の移動環境の改善のための政策提言、交通環境をよりよくするためのプロダクト開発のコンサルティングなど、活躍の場を広げている。また書籍を共著、編著、単著で3冊出版している。
楠田氏は、2017年6月開講の第35期『編集・ライター養成講座 総合コース』の修了生だ。これまでのキャリアや修了後の活躍について聞いた。

モビリティ ジャーナリスト 楠田 悦子氏

―留学経験などがあると聞きました。一方で国語は苦手だったとか。

カンボジアの長期滞在やスイスなどの留学経験を経て、個人が自由な思想をもって活動することに寛容な環境に惹かれました。

一方で、帰国すると日本での息苦しさを感じることがたびたびありました。私が、人と違うことを考えたり話したりする性格だったからだと思います。日本で暮らすのが不自由に感じたこともありますし、学生時代国語は苦手科目でした。

それでも留学中に、将来自分が頑張れそうな領域を考えたときに、「自分を育ててくれた日本をより良くしたい。地元で頑張っている人を応援したい」と思うようになっていました。編集やライターの仕事を目指したのはそんな経緯からです。

―最初のキャリアは専門紙の会社でしたね。

自動車業界の専門紙の新聞社に2010年に就職しました。アルバイト先の方からこの会社の求人が出ているのを教えてもらったのがきっかけでした。

当時から、紙のメディアを主力としていた企業は軒並み、部数減という課題を抱えていました。背景にはデジタルにシフトしていることがありました。

こうした状況をふまえ、当社もWebで新しいメディアを立ち上げることになり、その担当となりました。モビリティビジネス専門誌『LIGARE』の創刊編集長として、メディアのコンセプトやネーミングの策定を担当しました。

その後、このメディアを成長させるために、事業開発、営業、集金に至るまで、何でもやりました。

―国語が苦手なのに編集長を担ったということは、苦労が多かったのではないですか。

本当に大変でした。今だからこそ笑い話になりますが、当時は新聞の1面の記事が読めませんでした。内容が理解できなかったのです。

また、記事原稿を作成するにも、例えば情報源のひとつである、企業から届くプレスリリースの内容が全く理解できませんでした。

そうした中で自分なり原稿を書いてみるものの、構成から文章まで上手く書けるはずもありませんでした。当時の上司には冗談交じりに「ひどい記事しか書けなかったのに、よくこの仕事が続けられたな」と感心されるくらいダメダメだったのだと、今なら分かります(笑)

スキルも実績もないので、とにかく気合いで量をこなしていました。ただ、ある時、プツっと、心が途切れてしまいました。

いろいろなことを勉強したいと思い、2013年に独立しました。

―独立した後はまた違った苦労があったと聞きました。

個人事業主として「心豊かな暮らしと社会ための移動手段やサービスの高度化、環境を考える活動に取り組む」と志していたものの、モビリティジャーナリストの肩書とは異なる仕事もいくつか並行していました。お金を稼ぐことがこんなに大変なのかと、痛感しました。

企業経営者などへの取材を通して、生きる目的について考える機会を得られたり、エネルギーがもらえたことは収穫でした。そうしているうちに、「心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行う」という志に焦点が合っていきました。

また、単にライティングの仕事をしたいのではなく、自分の思い描く社会を実現するための効果的な手段として、メディアの仕事をしたいと思っていました。

編集・ライティングの仕事は、ある程度自分の考えを自由に書け、多くの人に見てもらうことができます。もし専門性を磨けば、主義主張ができ、色んな人に無条件で会える、影響力がある、それでお金がもらえる恵まれた仕事だと思っています。

―講座を受講しようと思ったきっかけは。

志は強くなるものの、相変わらず厳しい状況は続いていました。そんななかで、フリーランスと編集・ライティングの仕事を辞めようという思いが頭をよぎりました。

ただ、どうせなら辞める前に納得するまでやりきりたいと思い直しました。

それまで、編集やライティングは人に学ぶものではないと思っていました。しかし、苦手なことを克服するために、文章の書き方などをきちんと学ぼうと考えて、思い切って投資しました。

―受講中は、毎回全力投球をされていたことが印象的でした。

講師陣の方は、代表的なメディアの第一線で仕事をされている方ばかりで、他にはない機会でした。

講師ごとに編集やライティングをすることへのスタンスが違うことを発見できたことが面白いと感じました。半年の短期集中でエッセンスとスキルを浴びるように学べたことが良かったです。なかでも「正しい」文章の書き方や、学校で習った文章の書き方ではなく、人の心を動かす文章の書き方や構成などを学ぶことができました。

講師の方などとはいつどこかでつながるかもしれないと思い、講義後にコンタクトを取り続けていました。

その後、このコンタクトがきっかけとなって、仕事をいただけることがありました。

例えば、ビジネス系のデジタルメディアの編集を担当している講義の方に、自動車業界のことを書いていますと伝えたところ、「当社のオンライン版で自動車領域のコーナーを新たにつくるのですが、書いてみませんか」と言われ、何度もチャレンジしました。

当時はまだ、私の編集と文章力が十分ではなく実現に至らなかったものの、チャンスをいただけたことが嬉しかったです。

―受講後、3冊の書籍が出版されたと聞きました。

はい。出版の方法についての授業が生きました。

1冊目の書籍『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)は共著です。担当の編集者さんが丁寧に時間をかけて文章を読んでくれる方でした。多くのアドバイスをいただき、本を書くとはこういうことかと学びました。

2冊目は編著書『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)です。メンバーとともにムーブメントを起こそうと団結しました。ターゲット、全体構成、出版社への営業、執筆、編集、カバーデザイン、出版後のプロモーションなどを担当しました。最低限出版するレベルの文章を書くとはこういうことかと実感しました。

やりがいがあったのは、自分が描く世界観をもとに編集ができたことです。発売後、書籍を各所で配布し、理念を伝えることで、企業の新商品開発や自治体への政策提案などのコンサルティングの仕事につながっています。

3冊目の『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)は、ひとりで書けるようになりました。これらの経験を通じて、やり続ければなんとかなる、ということを実感しました。

編集やライティングを手掛けた3冊の書籍 ※左から出版順

現在は編集・執筆のほか、政策提案や企画、次世代の道路、保険、タクシー、自動車、公共交通などモビリティを切り口にこれからの社会や暮らしをつくる活動も行っています。

現場に精通し、自分も事業に関わることで、他の人よりも事実・実感を中心に書くからこそ提供できる価値があると思っています。

―今後はどのような活動をしていきたいですか。

まずは、「人が一生涯移動の問題がなく、安心して暮らせる社会をつくりたい」と思っています。そのために、社会を分析したり、問題を定義し、解決策を提示することはもちろん、実際に行動し続ける人でありたいです。そしてそこから、新しい仕組みやビジネスを量産したいです。また、3冊出版する機会を頂けましたので、残りの人生であと7冊出版したいと思います。

個人的に実感しているのですが、コロナ禍を経て、デジタルで仕事のやり取りが圧倒的に増えました。対面で会う以上に、デジタルでは、自分の考えを言葉にし、文字で伝えないと、仕事が進まないと感じています。

ただ、文章を書くことは、想像以上に地味で大きなエネルギーが必要となる行為です。しかし、言葉には秘められた力があって、社会を変えるパワーがあると実感しています。

落第点を取るような人でも頑張って書けるようになりました。打席に立ち続けるとヒットは出ます。書くことを目的にせずに、貴方の人生の目的を遂げる手段として、編集や文章を書くことを実践していったら良いのではないか、と思います。

編集・ライティングのスキルを体系的に習得するため、楠田氏が受講した講座は……
編集・ライター養成講座 総合コースでした
 

説明会や体験講座も随時開催中。
気軽にご覧ください。

 

<次回の開催日程 〔オンライン開講〕>

■講義日程

第43期 2021年7月31日(土)開催

■受講定員
130名を予定
 

詳細はこちら

 
お問い合わせ
株式会社宣伝会議 教育事業部
MAIL:
info-educ@sendenkaigi.co.jp