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コラム

世界で活躍する日本人マーケターの仕事

世界で活躍する日本人マーケターの仕事(フィリップス 藤井崇雅さん)前篇

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PLも見ながらビジネスをドライブさせるマーケターの仕事に興味

—マーケターの仕事に興味をもったきっかけとは?

前職のパナソニックでは、シェーバーやドライヤー、マッサージチェアなどの美容・健康カテゴリーの海外向けの商品企画と海外営業を担当していました。例えばアメリカに行ってピックアップトラックに新しいマッサージチェアを積んで色々な街を回ってロードショーをしたり、中南米でPanasonic Beautyの立ち上げをしたり、インドに行って車で凸凹道を進んだ田舎町をまわり商品のニーズをヒアリングしたりしていました。

部署名としてはマーケティングという名がついていたのですが、どちらかと言うと営業寄り。そんな折、仕事を通じて出会った現地のマーケティング担当者の知識や経験が豊富で、よりコンシューマーに近いところで商品をどうマーケットにあわせて売っていくのかを経験したいと思うようになりました。その経験がないのに、本社の立場でマーケットにはこうしてアプローチしていくべきだと意見していくことに違和感がありました。ですので、より現場に近い「川下」のマーケティングの経験がしたいと思っていた時に、フィリップスと縁があり入社しました。

日本のフィリップスでは、シェーバーという商品を担当して、PLに全責任を負い、ビジネスをしていく経験を積むことができました。ただ、もともと消費者を理解した上でエンジニアやデザイナーと一緒にものづくりをしていくのが好きなこと、また改めて「川上」のマーケティングの経験、商品企画の方に戻りたいと思っていたこともあり、それが叶うオランダ本社への異動希望を出していました。

日本市場で担当していたシェーバーは、オランダと中国に工場があるのですが、研究開発やデザインチームはオランダにあります。またイノベーションチームがオランダにあり、男性の身だしなみのケアがどう変わっていくのか、といった先行研究を担っています。

スマートミラーのコンセプト:テクノロジーとヘルスケアを組み合わせたイノベーションによる未来を見据えている。

35の国籍が集まり2000人を超える従業員が働くドラハテン工場では、イノベーションから製造までをエンドツーエンドでカバーする。ビジネス全体に技術的な知識を提供するテクニカルエキスパートグループやラピッドプロトタイプング部門などを有し、70年以上の歴史がある。

例えば人の体の健康状況や身だしなみの状況がミラーに表示されてそれに適したケアを助言するスマートミラーを開発したのもそのチームなのですが、だからこそ開発の川上から関わるためにはオランダに行くしかないと考えたのです。

ポジションの空き情報は全社員に公開 平等を重視するイコールオポチュニティの思想

—オランダ本社への異動の希望はすぐに通ったのですか?

グローバル本社の各ポジションは世界各国で希望する人がいるので競争率が高く、すぐには決まりませんでした。最終的にはシェーバーのキャンペーンで日本のマーケットシェアを2倍に伸ばしたことが評価され、オランダ本社にいた上司が呼んでくれることとなりました。

フィリップスでは日系企業のように異動の内示はなく、まるで転職サイトのような形で社内のオープンポジションを全社員が見られるようになっています。どの国のどのポジションが空いているか。常に見ることができ、募集をしていれば随時応募もできます。

こちらの人は3年くらい経つと新しいことにチャレンジしたいマインドがあるようで、およそ3年周期でポジションを変えていきます。3年いて、あまり新たな挑戦がなければ次に行くという考え方の人が多く、転職したり、社内で違う商品やポジションに異動したりします。そうしたこともあり、誰かが辞めたり、異動したらポジションが空きます。

そのポジションを社外からも募る場合もありますが、それでも必ず社内からの応募が可能なのです。フィリップスにはイコールオポチュニティという、みんなに平等にという考えがあり、社内の全員に見てもらって最適な人を検討していきます。

オランダ本社のメンバーと(月刊「宣伝会議」2020年4月号より)。

—もともと海外経験はお持ちだったのですか?

日本で生まれ育ちましたが、大学時代にアメリカに留学しました。それが最初の長期の海外経験ですね。いつかは色々な国で働きたいという想いが高校生の時からあって、アメリカに行ったらそこがスタートポイントになって将来色々な国にいけるかなという漠然とした思いでオハイオの田舎町の大学に入学しました。また、アメリカの大学は専攻を1年時に選ばなくてよく、色々なことを勉強して何がやりたいかを見つけたかったという理由もありました。アメリカのリベラルアーツ教育では、田舎町で寮に暮らしながらリーダーシップを学んだり、天文学やビジネスなどさまざまな分野の学問を学ぶことができました。

海外に出ると外からの目線で日本人である自分を見ることになると思いますが、リベラルアーツ教育を経て、私が学びたくなったものが日本文学だったので、3年生の時に上智大学の比較文化学部に編入しました。この学部では、世界中から集まる様々なバックグラウンドを持つ学生たちと英語で議論しながら、日本文学を学ぶというとてもユニークな経験をしました。将来、多様な人たちと一緒に仕事をしたいと強く思うきっかけになったような気がします。

藤井氏が学生時代を過ごした米国のリベラルアールカレッジ。「静かな田舎町で寮生活をしながら、自分が本当にやりたいことを見つめ直すことができた」という。

玉井博久

広告会社側(リクルート、TUGBOAT)のクリエイティブと、広告主側(グリコ)のブランド構築の両方の経験を生かして、デジタルを活用した顧客体験(CX)を手掛けカンヌライオンズなど受賞多数。著書に『宣伝担当者バイブル』(宣伝会議)、『「売り方」のオンラインシフト』(翔泳社)。2015年より5年連続シリコンバレーに、2018年より3年連続CESに、深圳、イスラエル、また米中のテックジャイアント本社に足を運び最新のデジタルテクノロジーを視察。得られた知見をマーケティング、Eコマース、コンテンツプロデュースに活用。シンガポールにてASEANのECビジネスを2年で10倍以上拡大させる。2012年より日本のポッキーの、2016年より全世界のポッキーの広告を統括。ポッキーは2020年に世界売上No.1*として、ギネス世界記録™認定。

*タイトル:タイトル:最大のチョコレートコーティングされたビスケットブランド/2019年 年間世界売上高 推計$589,900,000 (国際市場調査データによる)
* 国際市場調査のデータ分類上、クリームでコーティングされたビスケットも含まれる