『なぜ教科書通りのマーケティングはうまくいかないのか 電通戦略プランナーが教える現場のプランニング論』2024年3月5日発売、好評発売中
前回はターゲットインサイト(前編)として、インサイトを深く考えるための2つの切り口についてお話ししました。今回はインサイトを探るために避けては通れない「調査」の難しさと、調査以外でインサイトを考えるにはどういった方法があるのかについて触れていきます。では、始めましょう。
忙しさの調査には、本当に忙しい人は参加しない
生活者のインサイトを探るために、わざわざ費用をかけて行うのが調査です。それゆえ調査で出てきたものは生活者のインサイトなのだ、と思いたいのはやまやまですが、実際のところはそれほど簡単ではありません。
業界では「忙しさの調査には、本当に忙しい人は参加しない」と言われます。まずは、サンプルに代表性があるのかという問題があるわけです。調査会社の中には非常に安価で定量調査ができることを謳う業者もありますが、調査パネルの人数は多くてもその内訳をみると在宅時間が長い人に偏っているなど、いろいろと注意すべき点があります。今回は主に、定性調査を行う上で対象者からホンネが出てこない理由についてお話しします。
定性調査でホンネが出てこない理由
コロナになってからの定性調査はテレビ会議の1on1が多いですが、それまでは数人を同じ部屋に集めて調査するグループインタビューが行われていました。こういった形では、周りの人と自分だけ違う意見は言いにくいという部分がどうしても残ります。東京と大阪では特に東京で実施する調査において、この傾向が強いように思います。
また、定性調査の対象者の中には無意識のうちに「こういうコメントが欲しいのだろう」と先回りして考えてしまう人がいます。そうなると予定調和な内容のコメントが多くなり、新たな発見が少ない結果となります。
対象者自身がニーズに気づいていないため、言語化できないというケースもあります。人間の行動は無意識のうちにしてしまうことが多いです。ランダムではなく選んで行動しているからにはその理由があるはずですが、なぜなのかをうまく説明できない状態です。「人は何かが好きか嫌いかを、その理由を知るより先に判断する」という研究もあります。好きなものは好き
「なぜ教科書通りのプランニングはうまくいかないのか」バックナンバー
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