メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×
コラム

「広告」から「クリエイティビティ」へ【ACCプレミアムトーク】

ACC賞が名称変更、なぜ賞の名前から「CM」が消えたのか

share

【前回のコラム】「日テレ・土屋敏男×TBS・角田陽一郎に聞いてみた「テレビは、オワコンなのか?」」はこちら

CMの発展に寄与することから始まったACC(全日本シーエム放送連盟)の活動は、その目的を変え、新たにクリエイティビティを軸に日本の産業に貢献しようとしている。メイン事業である「ACC CM FESTIVAL」も、2017年から「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」に名称を変更した。今後ACCはどのように変化していくのか、そしてなぜ賞の名前からCMが消えたのか、ACC変革のリーダーである新事業検討委員会委員長の土橋代幸さん(トヨタマーケティングジャパン)と、新部門検討のプロジェクトチームメンバーである嶋田三四郎さん(博報堂DYメディアパートナーズ)、井上裕太さん(\QUANTUM)の3名に話を聞いた。

ACCが変化する先は?

—ACCはどう変わるのでしょうか?

土橋 代幸(トヨタマーケティングジャパン 取締役)
1984年トヨタ入社。財務部を経て90年に宣伝部へ異動。初代プリウスや企業広告を中心に手掛けた。2009年のトヨタマーケティングジャパン設立を経て、2013年取締役就任。現在に至る。

土橋:これまでのACCは、CMを中心とした広告領域のプロフェッショナルが集う集団でした。しかし今、そのプロフェッショナルたちが持つクリエイティビティを発揮できる領域は膨大に広がっている。広告領域にとどまらず、日本の産業あるいは社会全体の課題に貢献し、いい影響を与えられる集団へと変革を行います。

—なぜ大きく変わろうとしているのでしょうか。

土橋:僕は広告の世界に20数年いますけれど、およそ20年前はさほど大きな変化がなかったんですよ。市場の変化は細かくあったけれど、構造や勝ちパターンは変わらなかった。ところがここ数年で、これまでにないような大きな変化が起きている。デジタルが台頭し、メディア環境が変わり、お客様の購買行動も大きく変化した。長らくCMは大きな影響力をもって企業の広告活動を担ってきましたが、現在はそれだけで宣伝活動を考えることはほぼありません。ACCの役割も、大きく変わらなければいけない時が来たということです。むしろ遅すぎたくらい!

嶋田 三四郎(博報堂DYメディアパートナーズ メディア・コンテンツビジネスセンター メディア・コンテンツクリエイティブ一部 部長)
メディア&コンテンツの特性を生かしたクリエイティビティを軸に、統合コミュニケーションプロデュース、テレビ番組、ラジオ番組、イベント等のコンテンツプロデュースを手掛けるメディア・コンテンツプロデューサー。

嶋田:世の中の変化に対応するというのが、今回の変革の大きいテーマですね。もちろんCMの影響力はまだまだとても大きく、大事な要素ではありますが、それだけではない。僕は広告会社にいるので、お客様の商品やサービスを届ける術が本当に多岐にわたるようになったと感じています。すごく難しいのですが、裏を返せばやれることが何万通りにも増えた、おもしろくなったということ。我々はそこを企業やメディアの皆様と考えていきたい。ACCでも“変化をおもしろく”と捉えていきたいですね。 

井上:これまでACC賞というのは、メディアと広告を掛け合わされたクリエイティビティの領域にフォーカスしてきたと思うんですが、今はありとあらゆる業界で新規事業を作り、収益構造を変え、新しい領域に入っていかなくてはならない。広告の分野だけではなく、全ビジネスのファンクションにクリエイティビティが求められているんですよね。

土橋:勝ちパターンがなくなっているからこそ、みんなで模索し、方法を一から積み上げている状態です。「メディアクリエイティブ部門」をつくるのも、人々のメディア接触が劇的に変わっていて、それに応じてメディアの方がさまざまな工夫を凝らしているから。

嶋田:勝ちパターン、本当にありませんよね。

井上 裕太(\QUANTUM Inc. Startup Studio事業責任者)
マッキンゼーで日米欧の顧客への経営コンサルティングに従事後、被災した若者の教育支援を行う財団法人の創設・経営を経て、独立。フィールドマネージメント等で日米の大企業の新事業創出支援、スタートアップの経営支援を実施。『WIRED』日本版の北米特派員も兼任し、Y Combinatorなどを取材。また文部科学省のプロジェクト・オフィサーとして官民協働海外留学支援制度を設立。
2014年に\QUANTUMの立ち上げに参画し、現在はStartup Studio事業の責任者として大企業及びスタートアップとの共同事業開発、イノベーション・コンサルティング、コーポレート・アクセラレーターの企画運営を統括。スイスのSt. Gallen SymposiumによりLeaders of Tomorrow (Knowledge Pool) に選出。

井上:「戦略の時代の終わり」。結局いくら戦略をうまく描いても、最後にユーザーが「なんか気持ちよくない」と思えば使われないんですよね。ユーザーとどう対話して、どう届けていくかで最後が決まる時代になっている。ユーザーとの対話が得意な人々には、さまざまな活躍の場があるはずなんですよ。

土橋:僕が行っている床屋さんは田んぼの真ん中にあるんだけどね、田舎なもんで店の中を床屋の子どもが走り回ってるわけ。「どんな番組が好き?」って聞いたら、「テレビは観ない」と言うんですよ。「テレビはその時間まで待ってなきゃいけないじゃん」と。テレビにAmazon「Fire TV Stick」を挿して、テレビでYouTubeを見てるわけ。小学1年生が次々とユーチューバーの名前を挙げるんだもの。

嶋田:リアル(笑)。時間になったらテレビの前に座るんじゃなくて、自分たちが軸なんですよね。それは大きい変化。

井上:広告会社自身もすごく変わろうとしているのを感じます。広告をつくる過程というのは、エンドユーザーを深く理解して、彼らに届くコミュニケーションを考えるということ。それは企業が新商品を開発したり、事業価値の新しいモデルをつくる時にも活きるクリエイティブのリソースだと思います。

土橋:メディアの在り方や、これまでにない未来をつくるビッグアイデア。様々なチャレンジをACCが顕在化し、活性化し、クリエイティブの発展の手助けができたらということですね。

次ページ 「ACC賞の名称がなぜ変わるのか?」へ続く

「「広告」から「クリエイティビティ」へ【ACCプレミアムトーク】」バックナンバー