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コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

「バズ狙い動画を卒業した後の進路は、質の高いドラマではないか」 — 資生堂・宣伝デザイン部 植木彩さんに聞いて考えた

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PV数が多ければ、いいってもんじゃない

前回の記事で、2回に渡って「バズ狙いじゃなくてこうしようぜ」という議論を展開すると書きました。その記事は9月6日の日付ですが、本来は連載の8月分だったんですね。なので、続きであるこの記事はがんばって9月後半にお届けすべく書いています。これで帳尻があうはずだ。

さて前回に続いて、まずネットでのコンテンツ接触について、自分の「Yahoo!ニュース」での記事から考えてみます。

前に書いたように、「Yahoo!ニュース」では基本的に記事へのアクセス数が莫大で、とくにヤフトピに入ると一つの記事が100万PVに達することもあります。それはそれでうれしいのですが、一方で私にとって同じくらいこのアドタイでの連載は大事です。いや、アドタイ編集部の皆さんへの多少のおべっかも含めて言うと、こっちの方が大事かもしれない。

そのバロメーターがWEBマガジンの読者登録です。私はMediaBorderという「テレビとネットの融合」をテーマにした有料WEBマガジンを運営しています。あちこちで記事を書くと、プロフィールに入っていて目に留まる構造です。

別に、そこに誘導するために記事を書いているわけではありませんが、新しい記事を出したタイミングで登録する人がいると、ああきっとあの記事を読んでくれたのかなとなんとなくわかる。

そうすると、ヤフトピに記事が載ると、マガジン登録もものすごい数で来そうですよね。ところがそうではなく、ほとんどゼロです。一方、アドタイを読んで登録してくれたらしい人は、一定数います。

アドタイの記事がどれくらい読まれているのかはわからないのですが、さすがにYahoo!ニュースに比べると、ずっと低いでしょうね。日本でYahoo!ニュースよりアクセス数が多いメディアなんてないので、当然でしょう。専門メディアですしね。

100分の1だか1000分の1だかわかりませんが、大きな開きがある。でも、MediaBorderの入り口として言うと、私にとってありがたいメディアはアドタイなわけです。読者になる可能性がある業界の人が、読んでくれるわけですから。

Yahoo!ニュースの読者の99%以上は、広告やメディア関係ではないでしょう。そうするとテレビや広告のことを書いても少し距離があるわけです。だから「テレビとネットの融合」なんてテーマのWebマガジンには興味がない。いやそもそも、プロフィールまで見てくれる人はごくわずか。

ではYahoo!に書く意味は何でしょう?まず、広く世間に訴えたい話題、できるだけ多くの人に読んで欲しい話、あるいはテレビに関する視聴者目線で面白いデータなどを出す場です。とくにドラマの話は普通の人でも興味を持ってくれます。

そして、そういう記事を出すことで私の「知名度」を上げる効果があります。その効果は絶大です。テレビや新聞からも取材が来ます。「メディアの専門家」なムードを漂わせることができるわけです。

仮にWebマガジンの登録を目標とした場合でも、Yahoo!での記事が大きな援護射撃になっているのだと思います。「アドタイでなるほどなと思う記事を読んだし、Yahoo!でも時々見てるよなあ」って、知名度はすごく重要です。「境治」という漢字二字の変な名前を、メジャーなメディアで見たことあるかないかで、大きな差が出てくることになります。

さて、ここで確認したいのは、PV数が多ければいいってもんじゃない、ということです。PV数がさほどでなくても、こちらが対象にしたい人がほとんどなら、むしろそれでいい。PV数がものすごく多いからマーケティングに即プラスかというと、必ずしもそうではない。どう活用するか、が大事だということ。

ここまでが今回の前ふりで、ここからは紹介したい事例です。資生堂の「ランドリースノー」という動画がこの夏、ちょいと話題になっていました。ここから先を読むためにはその動画を視聴しないと話にならないので、見てください、いますぐ。前編後編の2本ありますよ。前編が10分弱、後編は15分弱です。

「ランドリースノー」動画ページ

見ましたね。では話を進めますよ。

何と言ってもキャストが旬!今年「カルテット」などでキテる高橋一生が、「黒革の手帖」で銀座のママを演じた武井咲と二人で主演。というより、二人しか出てない!

前編で投げられた謎が、後編で解ける。そしてどうやら、動画のいろんな要素が商品とつながっている。よくできたムービーだなあ。ここにはどんな企画意図があるのかと知りたくなったら、つくったのはなんだ、植木さんじゃないか!私が運営する勉強会・ミライテレビ推進会議に参加してくれている資生堂のコピーライター 植木彩さんでした。

ということで、植木さんに取材したわけです。そこには、ていねいなターゲット戦略があったことがわかりました。ポイントは、ちゃんとターゲットを想定して、その人たちとコミュニケーションするための動画制作とプロモーション施策を行ったことです。

次ページ 「ターゲット像をかなり明確に設定している」へ続く