コラム

クリエイティブシティ アムステルダムから送る「越境のススメ」 

世界でいま最も熱いクリエイティブシティ、アムステルダム

share

多くの企業がアムステルダムにヘッドクオーターを置く3つの理由

アムステルダムのクリエイターたちがネットワークを形成するシェアオフィス Photo by Jordi Huisman

それには、いくつかの理由があるようです。まず一つは歴史的にアムステルダムが世界の知や文化、そして科学の集積地であったこと。17世紀には、すでに多くの思想家が街の自由な雰囲気にひかれて、アムステルダムに集まっていました。そうした背景から文化的な思想が発達しただけでなく、思想を形にするような、今でいう、科学的なアプローチも多く取られ、気候にまつわる研究や地図などといった情報が集積していたようです。

また世界中の書籍の1/3がアムステルダムで発行されていたようで、当時の書籍はすべて手書きの書き写しであったことから大変高価なものであったと言われています。加えて、レンブラントやゴッホなど、偉大なアーティストを輩出していることは言わずもがなでしょう。

また、現代では世界で最も多様性のある街がアムステルダムであるとされています。実際に、現在アムステルダムに住んでいる人の国籍は、180カ国〜190カ国にのぼると言われており、2016年末からアムステルダムの図書館では、アムステルダム市民、180カ国の人の写真展が開催されました。

アムステルダムの住人の約50%は、オランダ以外の出身だとも言われています。なので例えば、グローバルマーケットのテスト市場として最適だったりもします。ニューヨークやロンドンは、その都市自体の市場が大きすぎるのでどうしてもその都市内の話になってしまい、意外とグローバルではないという話も聞きます。

さらにアムステルダムがここ最近盛り上がっている理由の一つに、Brexit(欧州連合からのイギリス脱退)問題があります。実は、ヨーロッパ大陸の中で一番英語が通じる国がオランダです。EUの大国であるドイツやフランスでは、オランダほど英語が通じません。地理的にもイギリスと近く英語が通じる、さらにイギリスからするとEUの大国ではないオランダにはあまりライバル心がないなどの理由もあるようです。

現在、イギリスにある外国籍企業も「まあ、イギリスがEU離脱後に、会社を移転するならアムス(テルダム)かな?」と言うノリがあるように感じます。実はしたたかで、合理的な思考が大好きなオランダ人がそうした風潮を逃すはずがありません。涼しい顔して、実は全力でイギリスから出ようとする企業の受け皿になろうとしており、例えば、三菱UFJフィナンシャル・グループは投資銀行業務のための拠点を、イギリスからアムステルダムに移すことが決まっています。

都市自体が世界遺産であるアムステルダムの中心に、1488年に建てられ、17世紀には、あのレンブラントが「テュルプ博士の解剖学講義」の画を描いたとされる歴史的な建物があります。そんな歴史的であり、かつ街のど真ん中にある建物が今は市民に開かれた「ファブラボ」となり、先端テクノロジーを使ったプロジェクトが数多く行われています。

日本的な感覚では、ついつい歴史的な建造物として人が入って来ないように保管しないと!なんて思ってしまいます。ところが、ここはもともと計量所として建てられた建築物。それ以降、常に各時代の最先端な事柄が、アムステルダムの中心であるこの場所で行われていたということ。なので現在、市民に開かれた、クリエイティブの先端施設であるファブラボとして機能していることはなんの不思議もないというのです。言われてみれば、レンブラントが描いた人体解剖も17世紀には異端、先端だったのでしょう。こうした事実からも、昔からアムステルダムが科学的で文化的な都市であった薫りがあちらこちらにあるのです。

ということで今回はまず、私たち、ニューロマジックがアムステルダムオフィスを開設した理由、そしてアムステルダムこそ日本のクリエイティブのみなさんに注目してもらいたい理由を書いてみました。

カンヌに行って、パリにちょっと寄ってから日本帰る、なんて実はもったいないのです!

次回からは、具体的なアムステルダムのクリエイティブ事情をご紹介していきたいと思います。

<著者プロフィール>

吉田和充(Creative Business Development/Branding Designer/Creative Director/保育士)

1972年東京生まれ。1997年慶應義塾大学卒業後、博報堂入社。CMプランナー/ディレクターとして、40社、400本以上のCM制作を担当。ACCグランプリ、コピー賞などを獲得。
在職中に1年間の育児休暇を取得し、家族でアジア放浪へ。2016年、子どものクリエイティブな教育環境を重視してオランダへ移住。2017年現在、Neuromagic Amsterdam BV CEO、個人事務所SODACHI CEO、STYLA TOKYO クリエイティブディレクター。広報広告全般からマーケティング、企業の成長戦略策定、ブランディング、新規事業立ち上げ、新商品開発、Web制作、サービスデザイン、海外進出などクリエイティブ業務全般を担当。
アムステルダム市との協働プロジェクトとして、アムステルダム市の「粗大ゴミの処理問題」にも取り組む。
元サラリーマンクリエイターの海外子育てブログ『おとなになったらよんでほしい|おとよん』連載中。

 

Follow Us