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コラム

いま、地域発のクリエイションが面白い!第2弾

人々の想い×オバケのアイデア×変幻自在のクリエイティブチーム=世の中を良くするソリューション

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ひょんなことから企画がスタート。それがオバケ流。

前述したように、オンラインで僕らの仕事を公表しない、というルールがあるため、これまでに何をやってきた会社なのか、謎が多すぎますよね。ですので今回は、僕らが大切にしてきた「人との関係性」から生まれた仕事を、ちょっとだけご紹介します。

まず一つ目は、大阪のサクラクレパスとのお仕事です。仲が良い代理店の方と飲み屋で子育てトークをしながら、「いつか子どもに自慢できる仕事がしたいね」と話していたのがきっかけとなり実現しました。初めにサクラクレパスから寄せられたのは、クーピーペンシルが発売40周年を迎えたことを記念した商品を作りたいという相談でした。そこで幅広い世代から人気の絵本『はらぺこあおむし」(エリック・カール作)の絵本の色を全て抜いてもらい、特別デザインの24色サクラクーピーペンシルとセットにしたプロダクトを企画しました。手がけました。

実はこのアイデアは、我が家の本棚を眺めていて思いついたものです。僕が子どもの頃に読んでいた絵本が未だに手元にあり、今、我が子も読んでいるという状況を見て、絵本という媒体の息の長さにフォーカスしました。

このプロダクトを手にとった子どもが、自由に色を塗りながら物語を楽しむ、という自分だけの絵本を作れる体験を提供するとともに、彼らが大人になったときに、かつて自分が作った絵本を我が子に読み聞かせる状況を生み出すというタイムカプセルのような仕掛けを考えました。

クーピーペンシルに久々に触れたとき、小さい頃にこれでたくさん絵を描いた記憶が鮮やかに蘇ってきました。商品体験そのものを提供することは当たり前ですが、それ以上の物語性を持っているというのが、同社商品の持ち味。それを具現化する仕組みをプロダクトに込めました。

「HOTEL ANTEROOM KYOTO」ホテル内施設などハードはもちろん、開催するトークイベントや企画展などのソフトまで企画に携わった。宿泊するだけではなく、宿泊客と現地の人々との交流の場としても機能させる狙いがあった。

ホテル・商業施設などの企画・設計・運営を手がける会社 UDS と共につくったのは、なんと「HOTEL ANTEROOM KYOTO」というホテル。UDSの当時の担当者が、Twitterで「ホテルつくりませんか?」と僕にメッセージを送ってきたのがきっかけです。

どこにつくるか、どういうコンセプトにするか、誰とつくるか–ゼロベースから企画し、サービス開始後2年目までお手伝いしていました。今ではなかなか予約が取れないホテルにまで成長しています。

ただ宿泊するだけではなく、ホテル内にあるギャラリーでは常時個展が開かれており、文化を発信するメディアとしての役割を果たしているほか、週末にレストランを覗くと、毎回面白そうなテーマのトークイベントが開催されています。また地続きのバーでは、国内外からの旅行客と現地の人とが楽しげにお酒を酌み交わしていて、異文化交流の場としても機能しています。

Scott & Rivers『Butterfly』のミュージックビデオ。

時々、ミュージックビデオ(MV)もつくります。ユニバーサルミュージックの依頼で企画制作したScott & Rivers『Butterfly』のMVは、モーショングラフィック全盛のMVの世界で、オール手作業でつくりました。男性・女性のペインターが壁面に絵を描き続けていくことでMVが完成します。やはり手仕事はすごい。

仲が良い代理店の方から連絡があり、仕事というか、表現の実験のような感覚でつくった同MV。喫茶店でアイデアを出しながら文章を書き、代理店の方はイメージカットを同時進行で描くというライブ・プランニングでした。30分で3案書き上げて提案し、制作が決定しました。MVに関してはプロフェッショナルじゃない分、リスクも考えずにポンポン提案してしまいます。『Butterfly』も、「男女のペインターが描く展開が、どこかで交差したら面白いよね!」という発言から企画が固まっていきました。24時間スタジオにこもりきり、絵を描きながら撮影を続ける…あの経験は忘れられません。

大阪のゲームメーカー PlatinumGamesのコンセプトムービー。一つのゲームができるまでの過程を丁寧に追いかけた。

ゲームメーカー PlatinumGames社のコンセプトムービーも、印象的な仕事です。同社からオフィシャルサイトをリニューアルしたいとの依頼が寄せられた際に、「ゲームの制作現場を世界に向けて公開したい!」と熱望し、実現に至りました。

ユーザーにとってゲームは「陳列棚に並んでいるのを買うもの」という認識で、一つひとつのゲームがつくられた背景にまで思いを馳せる人はそう多くないと思います。でも、この1タイトルをつくる過程には、膨大な時間とクリエイターの想いが詰まっている。それがユーザーに全く伝わらないことを、個人的にずっと残念に思っていたんです。そこで、このコンセプトムービーを制作し、一つのゲームが完成するまでにこれだけの人が「作ること」に向き合っているのだ、というのを見せようと考えました。

広告の制作期間が数カ月間であるのに対し、ゲームのそれは2〜3年。そこに総勢100人以上のクリエイターが時間を費やしています。生涯ゲームをつくり続けたとして、一体何本の作品に関わることができるでしょうか。そう考えると、PlatinumGamesのクリエイターが帯びている空気は、僕らがいつも身を置いている制作現場とは別次元のものだと感じました。

次ページ 大切なのは「どこにいるか」ではなく「誰と何をするか」。に続く